私は40代後半の自営業者です。 話しは、今から遡る事、10代の小学生の出来事でした。 九州の自然豊かな田舎町で育ちました。廻りは、田んぼと畑が、あちらこちらに見受けられ、山と川、そして海に囲まれた、のどかな環境でした。 当たり前のように、クワガタ、カブトムシ、蛇に蛙にトカゲなど、図鑑に登場する生き物たちが、勢揃いでした。
遊び道具は、殆どが手作りの物ばかりでした。お陰さまで、今になると、その頃の経験でDIYは、お手の物で、この時ばかりは、子供達に威厳を示され、尊敬の眼差しで見られます。何が幸いするか、判りません。 その出来事は、夏の終りか、初秋の頃の暑い時期でした。いつもの様に、外を駆けずり回っていたところ、ふと、屋根の庇に目が行きました。そうです、蜂の巣です。しかもスズメバチ。ビーチボール程の大きさで、優に100匹近くはいるかと推測されました。
私達はたちまち興奮と恐怖心に襲われました。しかしながら、カブトムシやクワガタ取りの際に、必ずスズメバチは同伴していたので、さほどの抵抗感はありませんでした。 当然の行き着く先は、巣の破壊でした。興味心が沸々と持ち上がったからです。先ず思いついたのは、ホースの水でした。しかし、直ぐに無理だろうと、気付きました。巣の大きさに対し、ホースの細さと水圧が足りないと判断したからです。次に思い付いたのが火でした。これは大丈夫だろうと、みんなの総意が得られ、早速に取り掛かりました。
先ず、長い棒を見つけて来て、その先端に新聞紙を巻きつけ、棒の先と新聞紙にたっぷりの油を注ぎました。着火してみると、思いの外、燃え上がりました。そして、恐る恐る火を巣に点火し、あっという間に巣に燃え広がりました。それから、直ぐ様、ダッシュでその場を離れました。何せ田舎の子供でしたので、着衣は半袖に半ズボンで、何ひとつ防具は着けていませんでした。
ほとぼりが冷めた頃を見計らって、戻ってみると、数匹の蜂が、飛んではいましたが、巣は落下していて、燃え尽きていました。とどめを刺すように、棒や鍬、スコップなどで、粉々にしました。みんな、興奮し、達成感で盛り上がりました。
今となっては、とてもとても、出来る勇気は持ち合わせていません。大人になるに連れて、邪推な気持ちが増えていく事が残念でなりません。 無邪気な好奇心旺盛な田舎者が故のなせる所業だったのでしょう。